ロンドン治験ってなんぞや
世界を旅行する長期旅行者が、旅程を変えて唐突に「ちょっとロンドン行ってくる」と言ったら「あーロンドン治験ね」と返されるくらい、「ロンドン治験」は長期旅行者にとってメジャーなイベントです。
そのため興味がある方も多いと思うのですが、治験と言うと怖いイメージが先行してしまってなかなか踏み切れない人も多いんじゃないでしょうか。
と言う事で、今回は世界一周中のwoltが、2019年2月~4月にかけて実際にロンドンでやって来た治験ボランティア(建前上ボランティアと言う事になっている)の経験をもとに、詳しい流れや注意事項などをまとめました。
目次
- ロンドン治験ってなんぞや
- そもそも治験とは
- ロンドン治験が人気な理由
- 治験の流れ
- 興味があったらとりあえず登録
- イギリス渡航まで
- イギリス渡航~事前検診
- 治験中(リッチモンドファーマコロジ―)
- 退所~事後健診
- 結局いくらもらえるのか
- 報酬受領用の口座について
- 治験を受けるにあたっての注意事項
- 治験入所する際の持ち物
- ロンドン治験まとめ
そもそも治験とは
治験と言うのは、開発した薬を世に出す前に、その効果や副作用があるかどうかを実際に人体に投与して確認する行程の事です。開発や動物実験を経て、薬を世に出す前の最終フェーズが治験と言うわけです。
人種によっても薬の作用が異なる可能性があるため、基本的に人種ごとにグループになって治験を受けます。日本人は「アジア人枠」で採用されるわけです。
ロンドン治験が人気な理由
治験は世界各地で実施されており、イギリス以外にベルギーやオランダの治験も日本人に人気ですが、やはりボクの知る限りロンドン治験の人気は群を抜いています。その理由をいくつか挙げます。
物価が高い=報酬が良い
建前上、ボクらは「治験ボランティア」として参加しますが、ボランティアには治験完了後に謝礼金として報酬が支払われます。当然これが目当てで参加するのです。
イギリスは物価が高いため、この報酬が高額なものが多い。案件によって金額は異なりますが、ボクが見た範囲では安い案件で1,100ポンド(約15万円)、高額なもので4,4000ポンド(約60万円)ももらえます。ヨーロッパ以外ではなかなかこう言った高額報酬は望めません。
イギリスは非シェンゲン圏
長期でヨーロッパを旅行する人なら必ず気にしなければならないのが「シェンゲン協定」。ものすごくざっくり説明すると、シェンゲン協定加盟国以外の国籍の人が、シェンゲン協定加盟国間を移動するのに出入国手続きは要らないが、過去180日の間にトータル90日しか滞在してはならないと言う協定です。
EU加盟国の多くはこのシェンゲン協定に加盟していますが、イギリスはシェンゲン協定には加盟しておらず、独自の滞在期間を定めています。日本人で観光目的なら180日間滞在可能なのです。
治験はけっこう長丁場になってしまったり、後述の事前検診の前後などによって今回の治験は見送ってイギリスに滞在し続け、次の治験に参加する等のケースもよく出て来ます。ボクが直接知っている人で、治験参加の為だけに5カ月イギリスに滞在した人もいます。
シェンゲン圏だと常に残りの日数を気にしないといけませんが、イギリスなら180日もあるのでかなり心に余裕が出来ます。
日本人対象の治験を実施している会社が多い
治験と言うのは、年がら年中やっている物でもありません。当然、募集がかかったけど自分に条件が合わない案件だったと言う事もあります。
ですが、ロンドンには日本人の治験ボランティアを募集する治験会社が3社もあります。それぞれまったく違う案件の治験を募集する、別々の会社です。3社あっても都合が合うとは限りませんが、確率が上がるのは確かです。
治験の流れ
まずはざっくりした治験の流れを紹介します。各項目の詳細は後で説明します。
- 治験会社にボランティア登録
- 参加希望案件の事前アンケート回答
- 渡航の日程調整
- イギリス渡航
- 事前検診
- 入所~治験参加
- 事後健診
- 報酬受領
こんな感じです。実際に治験に参加するまでにやる事が多く、旅慣れていないと少々面倒です。治験に参加が決まったら流れに従うだけと言う感じです。
では次の項から時系列順に説明して行きます。
興味があったらとりあえずボランティア登録
治験に興味があったら、とりあえずは治験会社にボランティア登録してみましょう。登録しておくと新しい案件が入った時にメールが入りますし、案件のスケジュールや募集条件も詳しく見る事が出来るので、とりあえず登録しておいて損はありません。
とりあえず3社登録してみる
ロンドンの治験で日本人スタッフがサポートしてくれる治験会社が3社あるので、とりあえずそれぞれに登録しましょう。
ボクが実際に治験参加したのはリッチモンドファーマコロジーです。他の旅行者の話なども総合すると、一番案件数が多いような気がします。HMRはロンドンで発行されてる日本語の冊子などに広告が掲載されているので、ロンドン在住者の日本人に有名です。
どの会社も、本人確認として電話orメールでの簡単なやり取りをする必要があります。Webサイトでの登録後に先方から連絡が来ます。電話の場合、イギリスの就業時間中(時差は日本-9時間)にかかって来るので、日本在住の方は受け取りにくいかもしれません。
自分に合う案件を探す
登録したら、各公式サイトで公開されている直近の案件を確認しましょう。たいてい募集中の案件は各社1件あるかないか程度ですので、時間はかかりません。
また、既に終わってしまった治験に関しても報酬や条件を見る事ができますので、一通り見て参考にすると良いです。
良さそうな案件を見つけたら事前アンケートへ、無ければ新規案件のメール連絡を待ちましょう。
イギリス渡航まで
ここからは、ボク自身が参加したリッチモンドファーマコロジーの話になりますが、おそらく他の治験会社でも似たような流れで進むと思います。
事前アンケートに回答
参加したい案件を見つけるか、案内のメールを受信したら、その治験用の事前アンケートに回答しましょう。
アンケートにはその治験に関わる条件も記載されているので、よく読んで正直に回答しましょう。回答内容に偽りがあったり、条件に合致しなくて治験参加できない事がロンドン到着後に発覚した場合、交通費や宿泊費の補助が下りません。
事前検診の案内を待つ
アンケートに回答したら、事前検診の案内を待ちましょう。ただしアンケートに回答した人全員に事前検診の案内が来るわけではありません。
アンケート回答者が多すぎる場合、渡英のスケジュールや、イギリスまでの距離によって、条件が有利な人が優先的に選ばれます。この時点で選考に漏れた場合、連絡すら来ません。日本にいる人だと必然的に後回しになってしまいますが、ヨーロッパや地中海沿岸にいる人はかなり高い確率で選ばれます。長期旅行者に治験参加者が多いのはこのためです。
事前検診の予約~渡英の日程調整
事前検診の案内がメールで来たら、事前検診を受ける希望日と時間を伝えて予約します。なお、事前検診には定員を超える人数が呼ばれ、早く事前検診に受かった人から入所に進み定員に達したら打ち切られる為、可能な限り早い日程を予約した方が有利です。
また、この時点で先方の担当者が決まります。事前検診の予約を担当者にお願いすると同時に、渡英スケジュールや航空券の相談をしましょう。
航空券の買い方などについては、事前検診の案内に添付されているはずなので、それをよく読みましょう。イギリスは入国がややこしいため、出国用の捨てチケットも購入しないといけません。
事前検診の日が確定し、担当者の許可を得た上で航空券を購入すれば、準備完了です。
イギリス渡航~事前検診
難関のイギリス入国
イギリスへの入国は、旅行者間では非常に厳しいとして恐れられています。入国審査で回答をミスると入国できません。入国できない場合、当然航空券は完全に自腹になってしまうので、入国審査には真剣に臨みましょう。ポイントは以下の通り。
- イギリスには観光で来た事(観光地を言えるようになっておくこと)
- イギリスには2週間程度しか滞在しない事(出国用の航空券を買っておくこと)
ありとあらゆる角度から質問が来ますが、基本的にはこの2点を主張すれば大丈夫です。
参考までに、ボクが入国した際の入国審査の雰囲気はこちらの日記からご覧になれます。
[日記]イタリアのジェノバからイギリスのロンドンへ。難関と噂の入国審査
空港からロンドンに向かう際のチケット
ロンドン周辺には国際空港が5つあり、またどれもロンドン市内からけっこう距離があるので、空港からロンドン市内へはバスや電車で移動する事になります。もちろんこの交通費も、治験会社から補助が下りる対象になりますので、しっかりとっておきましょう。
ただ、その場で買った電車のチケットは、改札を出る際に自動改札機に吸い込まれて出て来ませんので、チケットの写真を撮っておきましょう。ボクはブログ用にたまたま撮影していた写真で、補助を申請出来ました。
事前検診に向かう
予定通りロンドン入りすると、まずは事前検診です。事前の予約通りの時間に、案内に従って治験会社に向かいましょう。
事前の案内には事前検診に当たっての注意事項が書かれているので、必ずしっかり目を通しておきましょう。「1週間前から~禁止」「48時間前から~禁止」「24時間前から~禁止」「当日絶食」などの注意事項が書かれています。
なお、ボクの時は「1週間前から市販薬の使用禁止」「48時間前から激しい運動禁止」「24時間前からカフェイン禁止」「当日絶食は不要」などでした。1週間前だの48時間前だのは、渡英前から注意しないといけないって事です。また、事前検診当日の絶食が不要なケースは珍しいそうです。
事前検診の内容
事前検診の内容は、ボクの時は以下の通りでした。案件によって内容が多少異なるかもしれませんが、多分おおよそ同じです。
- 身長・体重測定(BMI算出の為)
- 血液検査
- 尿検査
- 体温・血圧・脈拍測定
- 心電図
- 問診
問診は事前アンケートとほぼ同じ内容でしたが、ボクの知る限り問診で落とされた人も1人いました。こう言った場合、宿泊費や交通費が出ないと思われます。
事前検診時に説明される事
事前検診では投薬される薬の内容や、現在その薬がどんなフェーズにあるか、想定される副作用等の説明を受けます。
例えば、ボクの時は薬の対象となる病名、現在は既に別の人種での治験完了している事、一時的な肝機能の低下などの副作用が見られる場合があるが、投薬を中断すれば全員回復した事などを説明されました。
それらの事を了解したうえで書類にサインする必要がありますが、説明書や書類は英語版と日本語版が用意されていますし、説明するのは主に日本人スタッフですので、しっかり内容を理解した上でサインする事ができます。
事前検診の結果
事前検診の結果は、早ければ当日の夕方には出るそうですが、ボクの時は2,3日かかりました。どうやら他国でしか実施できない検査があり、血液サンプルの郵送しなければならなかったらしいです
事前検診の結果がすぐに出てなおかつ良好であった場合、入所はすぐに決まります。
が、一発合格はけっこう難しいような気もします(案件にもよると思いますが)。ボクも含め、割とみんな何かしらの項目で後日再検査を受けていました。3回も再検査に行ったのに、結局血液検査で落とされた人もいます。
落とされた場合、事前検診に関わる宿泊費や交通費はもらえるケースともらえないケースがあるようです。ボクと一緒に事前検診を受けて血液検査で落ちてしまった人はもらえていました。この辺は治験会社や、落とされた理由などにもよるかと思います。
治験中(リッチモンドファーマコロジ―)
入所初日
事前検診結果が良好だと、“入所の案内”がメールで届きます。案内通りに再度治験会社へ行きましょう。
ただし、入所には定員よりも1~3名多い人数が呼ばれます。定員からあふれた人は「補欠要員」として、投薬はされずに1泊で帰されます。この「補欠要員」が決まるのが入所初日です。
入所初日は、事前検診でやった検査と同じ検査を再度やります。この検査結果が好ましくなかった(と言っても事前検診を通ってるから一般的に言えば良好の範囲)人から補欠要員になります。
補欠要員はその名の通り、なんらかの理由で補欠が必要になった時に呼ばれる要員ですので、万が一治験会社に呼ばれてもすぐに行けるようにロンドン(イギリス?)で待機しないといけないようです。
当然、この間の宿泊費はおりますし、また「補欠手当」と呼ばれる謝礼金もいくらか支払われるようです。
また、入所初日は「持ち物検査」があります。検査と言っても自己申告ですが。ざっくり言うと、食料品、薬類、シャンプーや歯磨き粉等の洗面用品、カメラは治験中使用禁止なので、これらをまとめて治験会社に預かってもらいます。「治験を受けるにあたっての注意事項」の項目でもう少し詳しく説明します。
入所中のスケジュール
入所中のスケジュールは、治験によって大きく異なるようです。
どうやらボクが参加した治験は、入所期間だけは長いものの比較的楽な内容だったようで、以下のような感じでした。
- 入所翌日:投薬&1時間おきの採血・体温・血圧測定、2回の心電図測定、採尿
- 投薬翌日:1回だけ採血・採尿・心電図
- それ以降:毎朝8時に採血。数日に1回採尿
これだけでした。入所翌日の投薬日だけ、カニュレ(血管の中に入れるチューブ)を13時間も腕に差しっぱなしで、1時間おき(午後は2時間おき)に採血するのが苦痛でしたが、それ以外の日は朝1回だけ採血して自由時間と言うお気楽スケジュールでした。
他の治験だと、投薬日以外にも1日で5回も採血があったり、入所期間中の尿を全て提出しなければならないのでトイレに行くたびに手続きが必要だったり、1時間おきに心電図測定があって電子機器をほとんど使えなかったりと、なんだか面倒そうなのばかりでした。
入所期間中の過ごし方
基本的に外出が禁止されている上、ベッドがあるフロアから出る事も出来ないため、ベッドの上か談話室にいるしか選択肢がありません。何か検査がある時と、食事の時は必ずベッドにいなければなりません。
談話室は、スタッフの会議室や治験者の食事配膳室も兼ねているので、日中は割と頻繁に追い出されていたみたいです。ボクは談話室はほとんど使っていませんが。
なので、1日の大半はベッドの上で過ごす事になります。シーツは言えばいつでも新しいのがもらえます。
ベッドは、広い部屋に20~22台ほど並んでおり、真ん中をパーテーションで区切られています。ベッドごとに全周を覆えるカーテンが付いていますが、これは就寝時もしくは検査で必要な時(女性の心電図計測とか)しか閉められない為、日中はずっとオープンです。
入所中の食事
また、ボクの時は1日4食。基本的に以下の時間で出て来ました。
- 朝食:8時半
- 昼食:13時
- 夕食:17時
- 夜食:20時
内容は昼食と夕食が、メインとして蒸し鮭、インドカレー、ラザニア、グラタン、チキンなどが1品。野菜はスイートコーン、グリーンピース、インゲン、ニンジン、きぬさや、スナップエンドウ、ズッキーニなどが1~3品、主食はライス、ターメリックライス、ナン、フライドポテト(多分揚げてはいない)、ベークドポテトなどが1品(ラザニアやグラタンの時は主食無し)、デザートはアイス、ブドウ、ブルーベリー、ストロベリーから1~2品。だいたいこんな感じの構成。
朝と夜は軽めの食事で、朝はコーンフレークor大麦のシリアルorベーグルにフルーツやジュースが付く感じ。夜はクラッカー&チーズやマフィンなどのスナックでした。
他の治験グループも、内容はほぼ似たようなメニューでしたが、時間は治験ごとにバラバラ。ボクらが夜食を食べている20時に、ようやく夕食を食べているグループもありましたし、12時に昼食を食べているグループもありました。
なお、飲料水は談話室にウォーターサーバーがあり、いつでも利用することが出来ます。
トイレやシャワー
基本的に24時間いつでも使えますが、どちらも電子錠がかかっているので、スタッフに頼んで開けてもらわないといけません。これがちょっと面倒でした。
ボクらが最初にいたフロアは男女別のトイレ&シャワーでしたが、次に滞在したフロアは男女兼用でトイレとシャワーが別室と言う構成でした。
いずれの場合も、トイレ・シャワーがトータルで各6部屋ずつくらいあるので、全部埋まっていて待たないといけない事は一度もありませんでした。
インターネット
フロアやベッドの位置によって、状態にかなりばらつきがあります。ボクらはベッドを2回移動しましたが、3カ所中1カ所はwebサイトすらなかなか開かない、1時間のうち20分くらい繋がらない、とてもじゃないけど動画なんてとても見れないと言う酷い環境でした。状態の良い場所は普通に動画が見れるくらいの速度です。
また、ルータは違うものの回線が社員と共用&周囲がオフィス街のせいか、平日日中がもっとも遅く、夜間や休日はさくさくです。
電子機器類の使用
カメラを除く電子機器類の使用は、基本的には許可されています。
ただし、スマホなどが心電図に影響する場合があるらしく、時々スマホを回収されたり電源を切らないといけなかったりする時間帯があります。
治験中に使える設備など
談話室にテレビ(ケーブルテレビが契約されている)、トランプ、チェッカー、よく分からないボードゲーム、雑誌(英語)、電子レンジ、ウォーターサーバー等があります。
ボクは結局一度もテレビは使いませんでしたが、よくアニメや映画を見ている人もいました。
治験中の運動
治験の案件にもよりますが、ボクらの時は運動は禁止されていました。が、数日に1回、10分程度のエクササイズの時間がありました。
運動強度はラジオ体操程度。ゆるくやればユルイし、真面目にやったら汗ばむ手前くらいにはなります。
スタッフ
ボクらの面倒を見るスタッフは、1日or半日ごとのローテーションのようです。ローテーションしているメンバーの1/3くらいが日本人のイメージです。
普通に事務所が併設されているので、担当していなくても常に誰か日本人スタッフはいたように思います(平日のみ)。医者の問診の時などは日本人スタッフがついて翻訳してくれたりします。
治験ボランティア参加者の雰囲気
長期旅行者以外にも、ワーキングホリデーや留学生などが多く参加しています。同じ治験グループは全員日本人ですが、同じ部屋に違う治験グループが入って来る時もあり、それが日本人グループでない事もあります。
不思議な事に治験グループによって雰囲気に偏りがあり、ボクのグループはあんまり人に関わらない個人主義者が多くて楽でしたが、あるグループは全員で談話室に溜まって深夜まで談笑したりトランプしたりしていました。
こればっかりは個人の好みと時の運なのでどうしようもありませんが、自分に合わない雰囲気のグループに入ってしまったらさぞかしツラかろうなと思います。
スタッフの雰囲気
多分、多くの人がイメージするより遥かに「ゆるい」です。
良く言えばおおらかですが、悪く言うと雑です。例えば、検査の際に出た医療用ゴミ(血の付いたガーゼ、医療器具が入っていた袋、心電図測定用のパッドなど)を平然とベッドに置き去りにして行きます。床に落とした物もほとんど拾いませんし、食べ終わった食事のトレイやゴミを一晩放置する事もあります。彼らがしっかり処分するのは採血針と採血容器くらいな物です。
また、事前に貰う入所の案内では「スケジュールが配られます」とあるのですが、そんなものは一切出て来ません。言っても出て来ません。なので、入所直後はスケジュールが一切わからない状態で始まります。スタッフに訊くなり、自力で検査の記録紙を見て解読するなりしましょう。ボクはこれにかなりイライラしました。
スタッフの人当たりは良い人が多いので、話しかけやすさに関しては問題無いでしょう。
退所~事後健診
報酬受領用の口座をフォームに入力
治験期間の終了が近づいてくると、「報酬受領用の口座登録」のメールが送られてきます。メール内にリンクが記載されており、webページ上に設置されたフォームに入力して送信する形になります。これに関しては後の項目で詳しく説明します。
治験会社によっては、送金ではなく小切手で支払われる場合もあるようです。
退所
荷物をまとめ、預けていた荷物も全て回収し、退所します。
勝手に出る事は出来ないので、スタッフの指示に従います。
事後健診
事後健診は、事前検診と比較して体調に変化が無いかどうかを見る健診です。一応、治験ボランティア参加者側の健康の為と言う説明をされます。
事後健診はたいてい退所の3~5日後くらいに設定されるようです。・・・が、ボクの時は1人、スタッフと交渉して退所と同日に事後健診を調整している人がいました。
治験の種類にもよると思いますが、どうしても事後健診を早く受けたい人は相談してみても良いと思います。
事後健診は、ボクの時は超簡単で、心電図、体重測定くらいでした。事前検診でやった採血も採尿も無し。
治験終了連絡
事後健診の翌日~数日後くらいに、「事後健診に問題が無かったので治験は終了です」と言う連絡が来ます。
一応、この連絡が来るまではイギリス国内に滞在していなければなりません。出国が近い方は早めにスタッフに相談しておいた方が良いです。
結局いくらもらえるのか
もらえる総額
もらえる総額=謝礼金+交通費宿泊費補助費-自分の用意した口座の外貨受領手数料
リッチモンドファーマコロジ―では先方の振込手数料は先方持ちでしたので、あちらは本当に額面通りの金額を振り込んでくれます。ただし、こちらの口座情報の不備などで受領出来なかった場合、2回目以降の振込手数料は差し引かれますので注意しましょう。
また、交通費や宿泊費の補助額は治験会社や案件によって上限が決められており、ボクの時は500ポンド(約7万円)でした。治験にかかわる費用がこの上限を超えても、上限以上の費用はもらえません。
なお、ボクの場合は謝礼金4,400ポンド+交通費宿泊費補助500ポンド-SBI銀行の外貨受領手数料25ポンド=4,875ポンドを受け取りました。2019年5月のレートで681,786円です。
報酬の振り込み日
振り込み日は先方から連絡がありますが、ボクの時は治験完了した月(4月)の26日に振り込まれました。
ただし、日本側の銀行の手続きなどもあるため、実際の入金には数日かかります。ボクの時はそのまま日本のゴールデンウィークに入ってしまったため、実際に入金されたのは5月9日でした。通常であれば先方の振り込みから1週間程度で入金されるようです。
報酬受領用の口座について
ポンドで受取るか円で受取るか
日本の銀行口座の場合、受取口座を日本円の預金口座に指定すれば日本円、外貨預金口座を指定すればポンドで受取れます。
どちらにしても外貨受領手数料がかかり、例えばボクはSBI銀行でしたが25ポンド、楽天銀行だと2,450円かかるようです。これは銀行によって異なるので、自分が用意する銀行口座はどうなのかを確認しましょう。
日本円で受取る場合、上記の手数料に加え、受取り側の銀行が指定するレートで両替されます。例えば楽天だとその時のレートに1ポンドあたり45銭が上乗せされるようです。
ポンドで受取った場合、日本で現金を使おうと思ったらいつかは日本円にしなければなりません。ポンド⇒日本円にしたタイミングが円安ポンド高であれば、円で受取るより得したと言えますし、円高ポンド安であれば円で受取った方が得だったと言う事になります。
ちなみにボクは、報酬受領後にガンガン円高ポンド安になっているので、売るタイミングを見失って困っています。ポンドで受取るか円で受取るかは、個人の責任で判断しましょう。
各銀行の英語記入用ページを探す
治験の終了前後に、指定されたフォームに受領口座情報を入力するのですが、もちろん入力は英語です。
各銀行に、銀行名その他の英語記入例をまとめたページがあるはずなので、それを探しましょう。例えばSBI銀行だとこんなの。[外部サイト]送金依頼書記入基本事項・記入例(SBI銀行)
中継銀行
ボクが一番悩んだのが「中継銀行(Intermediary Bank)」と言う項目。
SBI銀行側には「送金をお申し込みされる銀行にお尋ね下さい」と書かれており、治験会社の用意した入力フォームには「受取り側銀行に問い合わせて下さい」と書かれていました。お互いが「相手に訊け」と言っているのです。
ボクは金融取引に詳しくないので詳細はわかりませんが、結論を言うと「受領側がメガバンクなら中継銀行の欄は記入不要」です。
どうやら国をまたぐと、直接取引する契約を交わしている銀行は取引できるけど、どちらか一方が地方銀行などローカルな銀行の場合は直接取引できず、その国内のどこか大手の銀行を中継しないといけない場合があるそうです。
治験会社側がどこの口座から送金してるかはわかりませんが、おそらくイギリス側の大手銀行でしょう。なので、受取り側も日本のメガバンククラスを指定すれば、基本的に中継銀行は必要無いはずです。
治験を受けるにあたっての注意事項
持ち込み禁止の物が厳しい
前にちらっと書きましたが、治験には持ち込み禁止の物があります。
- 食料品
- 薬類
- 洗面用品
- カメラ
持ち込み禁止の物は、治験入所日に「預ける」形になります。テキトーなスタッフだとカメラと液体類を同じ箱にドカドカ放り込んだりするので、変な事しないようにしっかり監視しましょう。基本的にスタッフは雑な人が多いので信用しちゃダメです。
食料品とカメラについては「全て」なので悩む余地がありませんが、洗面用品と薬類は持ち込んで良い物とダメな物があります。これはスタッフが「成分」を見て判断します。なので、成分が書かれている外箱を捨ててたりなど、成分が確認できない状態だと問答無用で全部回収されます。
化粧品や洗顔料などはほとんど全部没収されるので、女性はけっこう不満みたいでした。
なお、ボディソープ兼シャンプーは、治験会社から無料で支給されますので、特にこだわりが無い人は不便する事はありません。
やや室温が低め
季節によるかもしれませんが、治験で滞在する部屋は意外と室温が低かったです。(3月~4月の話)
そう言う温度設定なのか、あるいは窓が広いので外気に影響されるのか、その辺はよく分かりませんが、とにかく気温はやや低めで、ボクは起きている間は半袖でしたが、寒がりの人は常に厚手の長袖やパーカーを着ていました。
また、寝具も薄っぺらいタオルケットみたいな物しかないので、ボクも夜は少し肌寒いと感じましたし、1回目の入所がよほど寒かったのか2回目の入所で小さい電気カーペットを持参する女性もいました。そのくらい寒いです。
寒がりの方は1枚上に羽織るつもりで服を用意しましょう。
意外と寝れない
治験会社のスタッフは交代で24時間勤務しています。ボクらの世話をする為にいる人もいるし、別の仕事で夜中も勤務している人もいます。
他の治験会社はわかりませんが、リッチモンドファーマコロジーはどの寝室も事務所と隣接しているため、夜中でも事務所や通路に煌々と明かりが灯っており、日によっては人がうろうろしたり話す声が深夜まで聞こえます。
ベッドの場所によっては通路とカーテン1枚しか隔てていないため、全然落ち着いて寝る事ができません。
また、検査の内容によっては早朝5時台に起こされる事もあるし、自分は検査が無くても隣の治験グループが早朝5時台から検査が始まってバタバタしている事もあります。
なので、ボクは治験中は慢性的に睡眠不足でした。他の治験者も、入所後半は昼になっても半分以上が寝てたりしたので、やっぱり夜ちゃんと寝れてなかったんじゃないかなと思います。
洗濯日はあるけど・・・
リッチモンドファーマコロジーでは「洗濯日」なるものが設けられていました。その名の通り、治験ボランティア参加者の洗濯物を回収して洗濯してくれる日です。
ただし、この洗濯日はボクらの場合11泊12日の間に1日しかありませんでした。3泊4日とかだと多分無いです。なので、着る下着が無いなどと困っている人もいました。
ただ、治験参加中は汗をかく事がほとんど無いので、正直下着以外は毎日換える必要は無い気がします。ボクは下着だけシャワーの時に一緒に手洗いして、ベッドにかけて乾かしてました。
また、洗濯物はかなり高温の乾燥機にかけられてる気がします。洗濯から返って来たら、ズボン丈がえらく縮んでた上、付属のバックル(樹脂製)が溶けてほとんど無くなっていましたw
このズボンはちょうど買い替え時だったのであまり気にしませんでしたが、樹脂製の部品が付いた衣服や、縮みやすい衣服は預けない方が無難だと思います。
治験入所する際の持ち物
食事は出るし、外出する事も無いので、必要な物は少ないです。まぁ旅行者はバックパック全部持って行けば良いのですが、近くから来る人が持ち物に困ったりしていたので書き出してみました。
- パスポート
- 着替え
- 歯ブラシ
- タオル
- パソコンやスマホ
- 暖房器具や防寒着(冬季、寒がりの人)
- その他ヒマつぶしになる物
パスポートは、入所の初日に本人確認のために必要なので、絶対に持参しましょう。
前述の通り、洗濯日はあるものの非常に少ないので、着替えはしっかり持っていた方が良いです。ボクの時は洗濯日が諸事情で後ろにずれて7日目くらいにようやく洗濯してもらえました。
近くに住んでる人で、割と忘れてる人が多かったのが歯ブラシとタオル。何故か、用意してもらえるものと勘違いしていたようです。歯磨き粉やボディソープ(兼シャンプー)は用意してもらえますが、歯ブラシとタオルは用意してもらえないので持参しましょう。
前述の通り、冬季の空調設定は低めでしたので、寒がりの人は何かしら持っていた方が良いでしょう。
ボクはパソコンとネット環境があれば永久に働いて学んで遊べる人間だから気になりませんが、そうでない人はけっこうヒマを持て余していました。トランプやチェッカー、よくわからないボードゲームなどは談話室にありますが、それ以外にヒマつぶしになる物があれば持参しましょう。資格や英会話の学習本を持ち込んでいる人もいました。
なお、お金を使う機会は一切ありません。極端な話、治験会社への行き帰りの交通費さえあれば良いです。
入所セットがもらえる
ボクの時は入所セットが全員に配られました。内容は以下の通り。
- Tシャツ
- ボディソープ兼シャンプー
- アイマスク
- 耳栓
- スキンクリーム(?)
- ウォーターボトル
ロンドン治験まとめ
以上、めちゃくちゃ長くなりましたがロンドン治験のまとめでした。
なお、個人的な感想を述べると「治験自体は悪くはなかったけど二度と参加はしないと思う」でした。めちゃめちゃ楽な生活と言えばそうなんですが、自由でないと窒息して死んでしまうタイプの人間には向きません。
外出できなかったり、朝起こされたり、ノッっている作業を中断してでも飯を食べないといけなかったり、食べたくない物を食べたり、逆に食べたい物を制限されたり、トイレに行くのも許可が必要だったり、運動が制限されたり、うるさい日本人がずっと同室にいたりなど、こう言うのがストレスになるタイプの人には少々しんどいものがあります。なおボクは全部ダメです。
集団生活や上げ膳据え膳の生活がさほど苦にならない人にとっては、とても快適に過ごせる事でしょう。まぁ治験が気になる方はとりあえず試しにやってみても良いと思います。
治験中の日々の様子を絵日記で詳しく描いています。興味ある方はこちらの一覧からどうぞ!
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