旅行者にとっての麻薬

旅行者と麻薬の関係

アゼルバイジャンだったか、どこだったか。コーカサスあたりの夜行列車に乗った時のお話。

ボクが早めに乗車して出発を待っていると、発車前に日本人の大学生旅行者が1名乗り込んできました。

夜は、ボクが早く寝たかったのでほとんど会話をしませんでしたが、翌朝、目的地に到着するまでの間、自然と大学生との会話が始まりました。

大学生「カザフスタンのある町で、夜歩いてたら脅されて金寄こせって言われたんすけどぉ~www」

ぼく(どこだよある町って)「はい」

大学生「オレそいつを返り討ちにして~逆に首絞めてやったら、あっちすぐに降参してめっちゃ謝って来て~www」

ネット上ではこういう、現実と妄想の境界が怪しい「俺スゲェ」トークを勝手に繰り広げる事を「イキってる」と言います。なぜか、日本人旅行者は年齢問わずこういうイキってる輩が多いです。なおボクは「イキリ旅行者」と心の中で呼んでいます。

ボクが日本人宿を避けるのも、こういうイキリ旅行者の相手がめんどくさいのが理由のひとつです。しかしボクだって30年近くも生きているので、面倒だなと思いつつもテキトーに合わせてやり過ごす程度には大人です。

ぼく「ふぅんそうなんだ。それは大変でしたね」

イキリ大学生「そうなんすよ~wwwんで、そしたらそいつ『マリファナやるから許してくれ』って頼んで来て~~~www」

ぼく「受取ったの?」

イキリ大学生「吸いましたよーwwwで、許してやって~~~一緒にマリファナ吸っていろいろ雑談しました。話したらけっこーイイヤツでしたよwwwww」

イキリ大学生「んで~さっき国境越えで麻薬犬が列車に入って来たじゃないすか~~~オレその時の麻薬が服に残ってたらどうしようってめっちゃビビってたんすよ~~~wwwww」

なるほど、さっき列車内を通った麻薬犬を見て、この話題を振って来たのか。

 

さて、このイキリ大学生の話の真偽はさておき、あちこち行く旅行者にとって、麻薬は意外と近い存在です。

ここ数年で、東南アジアの都市部や観光地からは、すごい速度で麻薬が駆逐されて行ってますが、未だにその気になれば旅行者でも麻薬を入手できる国や町はたくさんあります

海外旅行を続けていると、多かれ少なかれ麻薬の誘惑に接する事になります。と言う事で、今回は旅行者にとっての麻薬の危険性についてのお話を書こうと思い立ちました。




麻薬はどこからやって来る?

ウィキペディアに載るほど有名な産地は、アジアでは「タイ・ラオス・ミャンマー」。主に東南アジアから東に流通していて、もちろん日本にもやって来ます。

もう一ヶ所有名な産地は「パキスタン・アフガニスタン・イラン」。ここら辺のは主に西向けに流通していて、陸路だと南コーカサス・トルコを経由してヨーロッパに流れていると言われています。このルートは要するに昔で言う「シルクロード」なので、『今や「ドラッグロード」だねHAHAHA!』なんて冗談を耳にするくらいです。

細かい事言うと、インドやアフリカ、中国でだって生産されていますが、上記の国々は特に規模が大きいらしいです。細かい事は知りませんけど。

 

なので、麻薬生産国やその周辺を旅行していると、こっちにその気が無くてもマリファナ程度なら普通にお誘いを受けたり、吸ってる人を見かける事も多いのです。

 

マリファナ自体の危険性

最近は世界各国でマリファナが合法化されているニュースも目にするので、ご存知の方も多いかと思いますが、マリファナ(=大麻)はドラッグの中でも『ソフト・ドラッグ』と呼ばれ、覚醒剤や薬物(ハード・ドラッグ)よりも依存性が低く、また身体的負担が少ないのが特徴です。

とは言いつつもマリファナにも依存性はありますし、マリファナ危険論だってネットには溢れかえっています。ここではマリファナ自体が危険かどうかを議論するつもりはありません。

 

旅行者がマリファナやるってどうよ?

いったん麻薬全般の話から離れて、冒頭のイキリ大学生の話に戻ります。

(彼の話が全て事実だったと仮定して)軽率なふるまいをした彼にどういう危険があったのかを挙げていきます。

 

“ソレ”がマリファナでなかった可能性

まず最も怖いのが“もらったソレ”が実はマリファナでない事です。

直截的に言うとソレが粗悪な脱法ハーブの類だったらどうするんだと。

マリファナも脱法ハーブも、紙や葉っぱに巻いて火をつけ、タバコのように煙を吸うタイプのドラッグですが、中身は全然違います

特に脱法ハーブは、新しい物がどんどん開発されていて、その中には1回吸っただけで脳に障害が残ったり、摂取量を間違うと死に至るような、悪質な物も流通していると聞きます。

そんな夜の路地裏にいるようなわけのわからん人がくれた”ソレ”がもしマリファナじゃない危険な薬物だった場合、イキリ大学生はその場で人生が終わってしまってた可能性すらあったのです。

 

報復される可能性

マリファナを吸って身体にどんな反応が現れるかは、けっこう個人差があるそうですが、体験談などをまとめると以下の反応が多いようです。

  • 判断力や記憶力が鈍る
  • 楽しくなったり鬱になったり感情が激しくなる
  • 眠くなる

なんだかアルコールとそんな変わらん感じですね。全部同時になるとは限らず、人によって1つだけの反応を示したり、複合的な反応を示したりするそうです。

特に、眠くなる体質の人は眠くなり方が酒よりもすごいらしく、吸って数分で寝てしまい、気付いたら翌朝なんて人もいるようです。

更に、多量の煙を吸い過ぎた場合、泥酔のような状態になり、一時的に自分で考えたり歩いたりできなくなるそうです。これもお酒と一緒で、時間が経つと自然に回復します。

 

話は戻って、仮にイキリ大学生が本当に相手をぶちのめしてたとしたら。もしボクがその怪しいヤツの立場だったら、降参したフリしてマリファナやらせて、寝たり泥酔したりした所でボコボコに報復しますね。

 

第三者からの犯罪に遭う可能性

仮にそのマリファナが本物で、更にそれをくれた怪しいヤツにも悪意が無かったとしても、周囲が安全でない可能性があります。

マリファナは過剰摂取しても死に至る事はありませんが、前述の通りひどい泥酔状態になります

大学生の話が本当なら場所はカザフスタン。夜の裏通りでうろうろしているようなカザフ人が英語を話せる可能性は非常に低く摂取量や初めての場合の吸い方など細かい注意点を教えてくれたとは思えません。

怪しい男と無事に別れた後、判断力が低下したブラブラの状態で夜の街を歩くのなんて間違いなく危険です。そんな外国人が歩いていたらどう見てもカモです。ましてや路上で泥酔したり寝てしまってた可能性だってあるんです。

つまり、マリファナ自体の危険性はさておき、ただでさえ犯罪に遭いやすい旅行者にとって、マリファナを不用意に使用するのは非常に危険です。



マリファナが合法な国で吸うのはアリ?

法的にどうか

結論から言うと「使用」はアリです。

日本では大麻取締法と言う法律があり、マリファナは他のドラッグと違う扱いを受けています。

簡単に言うと、「所持と使用」は禁止されていますが、「使用」だけでは処罰対象になりません

 

国外でも日本人は「所持」しちゃダメ

たまに、海外では大麻取締法の対象にならないと勘違いしている人もいますが、ダメです。1991年に大麻取締法が改正され、国外も規制対象になりました

なので、日本人が大麻を所持したり取引すると、国外だろうと違法です。マリファナ合法の国に行く場合も「使用」に留め、絶対に「所持」しない事。間違っても取引なんて絶対にしてはダメです。

 

安全性的にどうか

前の項では散々危険だ危険だと述べましたが、状況さえ揃えばアリだと思います。

例えば、マリファナで有名な街、オランダのアムステルダムでは「コーヒーショップ」と呼ばれるところでマリファナを使用する事ができます。

基本的には、コーヒーショップ内で買って、店内で使用し、時間を置いて酔いを醒ましてから退店するのがルールだそうです。

こういう、安全な正規の店で、マナーとルールを守り節度を持って使用する分には、安全性についても問題無いかと思います。

 

マリファナ以外の麻薬の話も少しだけ

旅行者でマリファナに興味がある人はいても、さすがにその他のハード・ドラッグに興味がある人には会った事が無いので、ここは簡単に流します。

上記で挙げた通り、一般的に安全か危険か意見が分かれるマリファナですら、旅行者にとっては危ないのです。なので、それ以外のそもそも危険な麻薬などもってのほか

麻薬自体も危険ですし、混ぜ物が入った粗悪品は更に危険で、命を落とす事すらあります。いついかなる時も麻薬に手を出すのはやめましょう




知識を持つ事が大事

・・・と言う、上で述べた危険性の事を、その場でイキリ大学生に話しました。

ぼく「・・・って事でさ、○○さん(イキリ大学生の名前)はたまたま無事だったから良かったけどさ、そう言う危険性があるから、軽率な行動はしちゃいけないし、自慢げに広めるのもダメだよ。」

イキリ大学生「はぁ。まぁマリファナは軽いから大丈夫っすよ~」

そう言う事じゃないんだけどね・・・。見るからに不満気だし。まぁさっきほどの勢いは無くなったから良いか・・・。

 

彼のイキリを受け流さずに説得する事にしたのは、それを自慢気に広める事が危険と思ったからです。

もし、調子に乗った彼がよそでも同じ話をして、それを聞いた誰かがろくに知識も無いままその話を鵜呑みにし、いざ麻薬の誘惑を目の前にした時、大学生の旅行者がやったんだから自分も大丈夫なんて思ってしまったら、誰も責任とれません

 

旅行者にとって麻薬の知識は大事

何度も言うように、旅行者と麻薬の距離はとても近く、こちらにその気が無くてもいつ遭遇するかわかりません。長く旅行していたらほぼ間違いなく遭遇すると言っても良いです。旅行者にとって麻薬は、遠い世界の他人事ではないのです。

なので旅行者は、普段から出来る限り麻薬に関する知識を身に付け、麻薬の誘惑に出遭ったら冷静に判断し、軽率な旅行者がいたら変な話を拡散させないよう、責任持った行動を心がけましょう!

 

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コメント

  1. ログボ より:

    https://ja.wikipedia.org/wiki/シンガポールにおける死刑#麻薬関連

    ↑(´・ω・`)このへんは書かなくて良いの?
    他国は日本より厳罰だけど法的な危険性はみんな注意してるのかな?

  2. ベティ より:

    WOLTさんこんにちは。
    「イキリ旅行者」、的確な名前ですね!
    「イキリ旅行者」は今も昔も変わらずいるんですね。
    日本人宿を避ける理由・・・とてもわかります。
    つぶやきでした。

  3. wolt より:

    >>ログボさん
    そう言えばそうですね~、入れられそうなら追記してみます!

    実はこのシリーズ、一本のめちゃくちゃ長い下書きを、テーマごとに切って記事にまとめたものなんですが、既にその中の「空港での注意事項」の方に入ってるので、かぶる内容は書き損ねたりします・・・。そっちの記事書いてリンクにするかもー。

    >>ベティさん
    イキリ旅行者、昔もいたんですねw
    旅行に出ると気が大きくなってイキるのか、イキる人は旅行に惹かれやすいのか、永遠の謎です(;^ω^)

  4. ベティ より:

    WOLTさん
    私はクスリ関係で「イキッ」てる人は会ったことないのですが、私の時は「貧乏自慢」でイキってる人が多かったです。
    安かったから治安悪いエリアに泊まった俺ってすげぇ。
    インドで生水飲んだ俺ってすげぇ、ペットボトルの水なんて買ってらんねぇだろ、みたいな。

    旅のスタイルは人それぞれ。
    安心安全が第一ですよね~。

  5. wolt より:

    >>ベティさん
    そういう系もいますよねー><
    人がちょっとでも自分より多く払ってたりすると、鬼の首獲ったような顔したり・・・100円とかでw

    お金系は面倒ですけど、危険系は初心者旅行者がマネする可能性を考えると、ちょっと怖くもありますしね・・・
    ほんと、安全が一番です。

  6. Tom より:

    いいお説教しましたね! 触らぬ神に祟りなし、日本のことわざは時々思い出すとイイです。犯罪の可能性のある人や場所には近づかないのが一番カト。ログボさんも入国時のリスクを指摘してるけれど、リスクある人に近づくと、知らない間に荷物に麻薬を入れられたりして、ドラッグ輸送に利用されて、国境越えの時に捕まるなんていうリスクもある。オランダの例はドラッグ問題が深刻化しすぎて、禁止だけでは問題解決できないから、苦肉の策で合法化して管理しようと言うものだからね〜 そこに出入りする人にはやはりリスクあると思うよ。。。

  7. wolt より:

    >>Tomさん
    大麻は中途半端な立ち位置なだけに、いろいろ難しいですよねぇ。
    やっぱりある程度経験を積んでる旅行者に話を聞くと、ドラッグ否定派なり肯定派なり、それなりにみんな知識を持った上で、自分の意見を持ってるんですよね。知らずに周囲に流される人が一番危ない。
    基本は近づかないスタイルが一番ですね(; ̄∀ ̄)

  8. 京都マスター より:

    人間誰しも自己顕示欲はあるわけで、自分もイキリ旅行者にならんようにせなあかんね。
    としみじみしてたら自分の投稿者名自体がイキってたと気付いて反省してたわ。改名しよ。何がええかな?

  9. wolt より:

    >>京都マスターさん
    投稿者名wwwww
    「京都ランナー」くらいだと、なんだか皇居ランナーの仲間のニワカみたいな印象になっちゃいますし、難しいですね・・・。
    「京都ラウンダー」とかシンプルに「京都er」とか・・・。ていうかそのままで良いような気もしますけどw

  10. 匿名 より:

    (´・ω・`)僕も何がええかな?

  11. wolt より:

    >>ログボさん
    ログボさんの名前ってイキってたんですか!?